事業再生

事業再生と人員整理

グラフ4

景気低迷の影響を受けて業績が悪化し、経営危機に直面すれば、企業の存続のために仕方なく整理解雇に踏み切ることもあります。しかし、整理解雇を進めるにあたっては、労働法に関する一定の制限があるので注意が必要です。解雇は労働者やその家族の生活に深刻な影響を与えます。よって、労働者保護の観点から、解雇には厳しい制約があります。

適切な経営判断の下、事業規模を縮小し余剰人員が発生する場合、労働基準法19条(解雇制限)に抵触することなく、労働基準法20条(解雇の予告)の手続きを踏み、かつ、就業規則に解雇事由を明記している場合に限って、問題なく整理解雇ができると考えられています。優位な立場にある使用者は、 業績不振を打開するために、あらゆる努力をした上で、それでもなお、やむを得ない事情にある限りにおいて、整理解雇の措置をとるようにしなければなりません。

使用者が必要な手順を踏まずに整理解雇を行えば、「解雇権の濫用」と判断されることがあります。労働基準法18条の2では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」としています。そして、解雇理由については、就業規則に具体的に定めておかないと、「客観的に合理的な理由」があったと認められません。また、過去の判例の積み重ねによって「解雇権の濫用」の判断基準が示されており、以下のようになっています。

①人員整理の必要性
整理解雇しなければならない経営上のやむを得ない事情があること。
②事前に、解雇回避のための努力をしていること
企業は解雇を避けるためにできる限り努力すること。
具体的には、役員報酬のカット、経費節減、不採算部門の切り捨て、新規採用の中止、 希望退職者募集など。
③解雇対象者の人選の合理性
解雇対象者の人選について、客観的で合理的な基準が設けられ、それが公正なものあること。
④労働組合と協議を行う等の手続きの妥当性
整理解雇を行うにあたって、労働組合又は労働者代表に対して経営状況等を説明し、再建等について十分に協議をしていること。


事業再生とIT

鷹

会社の業績が落ち込んでいる場合、どこに原因があって、それが業績にどの程度の影響を与えているのかを分析した上で、不採算事業の整理を検討することになります。その場合、得意先ごとの採算性、商品や製品ごとの採算性、

事業部門ごとの採算性、など色々な角度からの検討が必要となります。しかし、実際にこれらの分析を行おうとすれば、得意先ごと、商品や製品ごと、事業部門ごと、の収益性を『見える化』しておかなければなりません。さらに、不採算部門を整理する場合には、損益ベースの採算性を重視するだけではなく、資金繰りへの影響を考慮しなければいけません。このような分析を行おうとすれば、一元管理された共通の情報源をベースにして、各部署の垣根を越えた擦り合わせが必要です。しかしながら、よく見られるのが、個人の力技で分析しているケースです。つまり、社内システムのデータが経営分析に転用できないため、結局、人力に頼らざるを得ないのです。そのため、営業部の予算と経理部の予算の辻褄が合わないとか、他の実績値との関係を説明できない、といったことが起こりがちです。経営分析は、個人の頭の中でするものではなく、社内システムをベースにして行うべきで、その中で整理され、区分された数値を使って行うべきです。IT投資は、業務プロセスの効率化、業務の品質向上のためだけに行うのではなく、経営分析をも意識して構築されなければいけません。

根本的な問題は、中小企業のシステムは、商売の力関係に逆らえない宿命にある点です。よくあるケースは、大金を費やして社内システムを構築したにもかかわらず、結局、大口の取引先の仕様に合わせて、データを加工しなければならず、事務の非効率化が改善されないというものです。中小企業は、多額のIT投資により四角のシステムを作っても、大口取引先が凸型のシステムを作れば、それに合わせて部分的に凹型のシステムを作るなど、非効率な作業をしなければならないのです。また、中小企業では、大企業が使用するようなシステムを導入すべきではありません。例えば、オンタイムで生産管理をするシステムを導入したとしても、そのことによって、そのシステムを管理する人員が必要となります。中小企業にはそのような余力はなく、結局は、そこまで手が回らないので、宝の持ち腐れとなるケースがあります。さらに、多額のIT投資によって社内システムを構築すれば、保守・メンテナンス等のコストが高くつき、資金的な事情から満足な仕様変更ができない、といったケースも見られます。

中小企業のシステム開発では、柔軟なシステムを構築すべきです。その場合、随所で人力に頼ることも必要となるでしょう。重要なのは、人力とITの組み合わせではないでしょうか。社内システムは、業務フローに合わせて、チェック機能を働かせる必要があります。コード管理については、専担者にのみ権限を持たせる必要があります。

それらを踏まえ、適材適所の人員配置と創意工夫により必要最小限のシステムを作れば、変化に柔軟に対応しつつ、仕様変更に要するコストも軽減できるでしょう。その上で、社内システムを経営分析に転用できるようにすれば良いと考えます。

チャンス2

~他ページへのリンク~

 経営コンサルティング-「労働分配率と労働生産性」