内部統制

リスクがいっぱいの経営環境

厳しい経済環境下においては、いつ・どこから矢が飛んでくるかわかりません。想定されるリスクを評価し、発生する確率が高く、起こった場合のダメージが大きなリスクについては、事前の対策で、リスクを小さくしておく必要があります。

リスクがいっぱい

得意先企業からの商品の引揚げ

取引先に商品を納入後、代金の回収をしていない状況で取引先が倒産目前となった場合、自社が納入した商品を引き揚げ、売上債権が回収不能となるのを回避しようとするでしょう。しかし、自社への損害を回避するための自己防衛の行為であっても、このような状況下で債権回収を図ることは禁止されています。その方法を誤ると、民事上の問題ばかりか、刑事上の問題にも発展します。商品引き揚げとは、債務者(倒産会社)が占有(事実上支配)している商品を自分の支配下に戻すことをいいますが、自社が販売した代金未回収の商品といえども、法律上は、相手方の商品となるからです。

こうした倒産企業からの商品引き揚げは、一部債権者による抜け駆け(いわゆる詐害)行為となり、他の債権者や管財人から民事上・刑事上の責任を追及されることになります。このような問題を起こさないためには、慎重に商品を引き揚げなければなりません。それにはまず、相手方と交渉し、商品の売買契約を合意解除し、商品の所有権を取り戻すことです。この点については、商品引き揚げを合法的に行う方法が幾つかあります。

普段からの対応が大事

得意先への売上債権の未回収を防止するにはどうすればよいのか。これは、リスクコントロールの重要なテーマの一つです。先ず、普段からうるさ方の取引先と思わせることでしょう。売掛金の入金期日の朝には、必ず、通帳記帳を確認し、未入金の得意先がある場合には、午前中に催促をします。そして、午後一番に入金してもらうように伝えて、再度、通帳記帳で確認するなど、当日中に対応すべきです。得意先に、「あの会社の経理部はしっかりしているから、遅れたら後が大変だ」と普段から思わせておけば、支払の順位を先にしてもらい易くなります。そして、得意先の状況を常日頃、注意深く観察しておくことも大事です。

鍵

営業社員が得意先へ訪問する際には、商談に夢中になるだけではなく、会社に変わったことがないかを常時、把握しておくことが大事です。中野オフィスでは、倒産懸念要因チェックリストを作成しています。定期的にチェックリストを作成し、与信管理に役立てて頂けます。

契約変更による対応

得意先の業績が悪化して、得意先への売上債権が不良債権になるかもしれない。そのような場合、どうすれば良いのでしょうか。”取引をやめてしまう”というのも一つの対応策です。しかし、それが利益率の高い、大口の取引先である場合には、自社の業績に与える影響が大きいため、そうはいかないでしょう。得られる果実を享受しつつ、リスクに備えるという判断も必要です。このような時、取引契約を変更することが考えられます。相手方の業績が悪化している状況で、何らの対策もなしに、商品を供給し続けるわけにはいかないからです。タイミングとしては、得意先が条件変更を認めざるを得ない状況で行うことが望ましいでしょう。例えば、得意先が支払い条件について相談に来た時です。

ビジネスマン4

回収サイトの短縮、商品に対する譲渡担保の設定、相殺取引の追加など、契約内容を大幅に変更し、売上債権が回収不能となった場合のリスクを最小限に抑えるようにするのです。さらに、得意先の倉庫には頻繁に出向くようにして、自社の商品が適正に保管されているかを確認することも必要です。