経営計画

中長期の経営計画の策定

グラフ2

チャンズ

経営環境の厳しい現在にあっては、長期的視点に立った経営計画を策定し、その実現に向けて全社的に取り組むことが必要です。しかし、将来の事業ビジョンや経営目標を設定する前に、やるべきことがあります。現状を的確に把握するという作業です。現状認識ができていない状態で将来の見通しを描いても、説得力のある事業計画とはなり得ません。現状認識の手法として、一般的に、SWOT分析が活用されています。

SWOT分析

SWAT表①

① 自社を取り巻く外部環境要因を整理し、その中からビジネスチャンスとなるもの(機会)と阻害要因となるもの(脅威)を抽出します。整理する外部環境要因は、身近なものとして、主に、市場の成長性やトレンド、顧客ニーズ、競合他社のシーズなどですが、大きな外部要因も把握しておくべきです。例えば、関連法規制の動向などは、いわば「天の声」となって、市場からの撤退を迫ります。特に、中小の卸売業では、消費税の増税によって、粗利益が圧縮される上にそれを価格に転嫁できず、そもそも事業が成り立たなくなる可能性があります。
② 自社の経営資源に関する内部環境要因から、自社の「強み」と「弱み」をできる限り客観的に整理します。整理する内部環境要因は、取扱商品、顧客口座、人材、設備、営業力、技術やノウハウなどです。
③ 外部環境要因から分析したビジネスチャンスと自社の経営資源の強みを生かして、将来の軸となる事業分野及び進出したい事業分野を明確にします。そして、将来の事業ビジョンを実現する上でネックとなる経営資源の弱みは、外部の事業者と提携するなどして補うよにします。

注意すべきは、色々な角度から見たSWOT分析になっているかという点です。SWOT分析表は、社長の頭の中で行うのみではなく、管理職、従業員といった階層毎に作成すべきです。現場の意見、管理職の意見、その他色々な人の目線から見たものであるべきです。特に、内部の意見については、相違工夫をしてインタビューしなければ、有用な情報が得られません。単なる、内部批判となることもありますし、上司の顔色を窺って、本音が聞けないのも困ります。問い掛け方によって、得られる回答が全然違ってくるのです。また、顧客情報については、営業社員によって、得られる情報の質に差があります。得意先の自社商品や競合他社商品の占有率を取扱商品毎に把握している方もいれば、得意先へ訪問していない方もいます。市場で定点観測をして、競合他社商品の技術トレンドを常時分析している会社もあれば、そのようなことには無関心の会社もあります。顧客から直接、定量的な情報を入手するには、ヒアリングシートを使用してアンケート表に集約するのも良いですが、時には、外部コンサルタントが相手企業に赴いて、直接インタビューをするのも良いのではないでしょうか。その際には、競合他社の情報も併せて確認すべきでしょう。いずれにせよ、SWOT分析は、やり方を間違えれば、何ら意味のない分析となります。

SWAT表②

部門単位の行動計画

中長期の経営計画を立案する場合、行動計画(特に、社員の具体的行動計画)を明確にし、それを部門単位に落とし込んで管理すべきです。多くの経営計画では、漠然とした目標数値はあるものの、行動計画が明確に数値化されていません。売上予算の根拠を説明できず、売上予算自体が帳尻合わせ的な数値となっている場合も多いと思います。しかし、売上予算などは、行動計画を明確にした上で取り組まないと、計画の適正さを検証することができません。どのような状況が見込まれる中で、どのような動きをするからこの売上となる、という説明が必要でしょう。そして、売り上げ達成の確度にもランク付けをし、予算と実績の乖離を分析します。

部門別予算の作成と達成度合いの管理と分析は、継続して行わなければなりません。ありがちなのが、行動計画を立てても、日々の業務に追われて、いつの間にか確認作業が疎かになってしまうことです。このような点から、運用面では、計画を管理・監督する者を任命すべきでしょう。うるさ方の番頭さんがやれば、スムーズに流れ易いと思います。さらに、行動計画に伴う、商流の変化(外部委託・業務提携・技術導入)の影響も数値ベースで計画に落とし込むようにします。また、経営再建の局面などでは、目標に向かって社内が一丸となって取り組む必要があります。このような場合、社員に経営計画の具体的な数値を公表すべきです。個別のノルマを押し付けるだけでは、社員からしてみれば、見えないゴールに向かって走れと言われているようなものです。

予算と実績を分析し、次の行動へと繋げるPDCAサイクルについては、文字通り廻っているだけではいけません。最初は、手探りで大きな円を描くかもしれませんが、次第に精度が向上し、円が小さくなっていくものでしょう。

PDCA

また、経済環境が目まぐるしく変化する昨今にあっては、不測の事態がつきものです。従って、経営計画は硬直的なものとせず、定期的に見直しながら弾力的に運用すべきです。

売上目標の定め方

売上計画を作成するに際は、合理的な範囲で売上を分類し、堅めの計画にすべきです。中小企業の売上計画では、社長や経理部長が鉛筆を舐めながら、こんなものかなぁ・・・と大雑把な計画になりがちです。達成できない売上目標を立てて、数字の根拠は?と問われても、なるほど・・・と思わせる説明はありません。そして、それを達成できず、差異分析もできない、という状態では金融機関からの信用を落とすことになります。

売上増加の要因としては、大まかに次の3点が挙げられます。
①新製品・新技術等の開発
②市場の拡大
③営業努力

上記①及び②は、売上増加の要因となりますが、③については根拠が不明確なため、営業部門の行動計画を明確に提示する必要があります。具体的な行動計画もなく、営業努力で売上が増加する、といわれても金融機関は信用してくれないでしょう。単年度の計画においては、売上計画を商品別や得先別に分類した上で、それを達成するための行動計画の提示が求められます。


キャッシュフロー(資金繰り)予算

オフィス1

資金繰り表では、損益予算と資金繰り予算のみをセットで作成しているパターンを見かけます。一見、もっともなやり方で、このような方法によって資金繰り予算を立てている方が多いと思います。しかし、それだけでは予算の信憑性が担保されません。

貸借対照表予算があってはじめて、資金繰り表の検算ができ、資金繰りは貸借対照表の推移から作成するからです。

資金繰りの推移と貸借対照表の推移はセットで考えるべきです。損益予算と資金繰り予算(フローの予算)は、最終的に貸借対照表(ストックの予算)に表現されるからです。例えば、売上予算を立てると、次に、売上回収サイトから資金繰り予算に反映させます。そして、結果として売上債権(受取手形・売掛金)が貸借対照表上の残高を確認することになります。つまり、売上→回収→債権残高の一連の流れを説明できなければ、結果が解らない予算ということになります。同様に、仕入→支払についても、債務残高を説明しなければなりません。そして、原価率などから、(想定)在庫予算を作成することで、運転資金の予算を確認することができます。上記3点の残高推移は、未来を予測するためにも重要です。つまり、運転資金の推移は、貸借対照表の売上債権・仕入債務・在庫の各月の残高推移で計算するからです。

運転資金 = 売上債権  + 棚卸資産 - 仕入債務

会計の世界では、フローの数字とストックの数字は、ワンセットです。経理担当者が、鉛筆を舐めながら机の上でフロー予算だけを作り、それを金融機関に提出しても、取り敢えずの参考資料です。そもそも信憑性が低い予算であることから、経営がひっ迫してくると、月次の資金繰りだけではなく、週繰り・日繰りの資金繰りの提示も求められます。

ビジネスマン3

エクセルで資金繰り予算を作る際のポイントは、まず売上予算・仕入予算を作成し、次に、回収サイト・支払サイトを経由して、売上債権残高・仕入債務残高を作成することです。詳しくは、中野オフィスにご相談ください。

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 経営コンサルティング-「労働分配率と労働生産性」